しにそうなほど

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 ちょっと嫌がらせをして諦めさせようと思った一言だったのに、こいつは早速ベルトに手を掛けている。さっきまでめそめそしていたくせに、妙なポジティブ思考がまた腹立たしい。 「期待すんなよ。俺は男なんか興味ない」 「そうだよね……分かってる」  俺はお前を苛めているだけなのだと念を押して、やっと落ち込んでくれた。  安全靴と一緒にズボンを脱いだところで「上も?」と聞かれ頷いた。  シャツの胸ポケットからボールペンと一緒に何かが落ちた。手に取ると、真っ赤な守り袋に”恋愛成就”の刺繍が入っている。  俺から奪うようにしてお守りを取り戻すと、両手で握って俯く。薄闇でも分かるほど、赤らんだ顔は気の毒なほどで、茶化す気にもなれない。  どこの神社で買ったんだか知らないが、こんなものを大事に抱えて告白しにくる奴なんて、今どき他にいるだろうか。 「いいから、早く脱げよ」 「ごめん。すぐ脱ぐよ」  残りを手早く脱ぐと、あいつは土で茶色に染まった白い靴下と皺だらけの安っぽいトランクス一枚で寒さに震えながら俺を見た。  首から上と手首から先だけが日に焼けていて、地肌は意外に白い。 「……ヒーター付けていい?」 「駄目だ」  だって俺はこいつを苛めているんだ。優しくなんかして、もっと好かれてはたまらない。 「カントクさん、俺のことが好きならここでオナニーしてみろよ」     
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