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「それにしても、さ」
二限に授業が入っていない栄と誠二は、早めに学食で場所取りをしながら話をしていた。
「その魔法を発生させる物質、発見者の御手洗さんの名前をとって御手洗粒子なのはいいけどさ。通称wc粒子っていうのは、どうなのかねー」
魔法法史の教科書をぺらぺらと捲りながらの誠二の言葉に、栄は苦笑する。
「しょうがないじゃん、おてあらい、だもん」
「最初に言い出した奴、上手いこと言ったと思ってんだろうなー」
「案外、本人かもよ。話によると、結構愉快な人だったらしいし。愉快っていうか、天才は奇人変人っていうか」
「なんだそれー。でもまぁ」
ぱたん、と教科書を閉じると、誠二は机の上に倒れ込んだ。
「座学ばっかりでつまんないなー。早く実技やりてー」
その言葉のバックで、鈍い破裂音がした。
「……実習棟かー」
魔法実習棟からの爆発音や悲鳴は、魔法学部では当たり前の、日常的な光景だ。実技授業で魔法の使用に失敗した音。
栄達一年生は、授業のほとんどが基礎科目の座学でしめられている。実際に魔法の使用を練習する実技は、三年になってから本格化する。
「爆発しても実技やりたいわけ?」
「実習中は先生が助けてくれるしいいじゃん。火炎系の魔法使えるのなんて、実習中ぐらいだしさぁ」
「まあ、それ系のは魔法士になっても使うのに特別の許可が必要だしなぁ」
危ないから。
「そうだろう? だから、はやく実技やりたいんだよ実技」
ばしばしと、誠二は机を叩く。
「耐えろ、あと一年半ぐらい」
「まったく他人事だと思って。でもまあ、そうだよなー。栄は御厨先生の授業受けたかっただけだもんなー」
「ああ」
こくこくと何度も栄が頷く。首が飛んで行きそうな勢いで。
「じゃあ、寝るなよって話だけどな」
友人の冷たい一言に、
「ソレを言うなって……。マジ今日は失敗したし」
栄は一度頭を抱えたものの、
「でもまあ、御厨先生に結果として褒められたし、だいぶ話したし、いいかな!!」
良い笑顔で頷いた。
「おまえのそのストーカー気質、マジひくわー」
誠二は本気で嫌そうな顔をする。
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