第一章

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「それにしても、さ」  二限に授業が入っていない栄と誠二は、早めに学食で場所取りをしながら話をしていた。 「その魔法を発生させる物質、発見者の御手洗さんの名前をとって御手洗粒子なのはいいけどさ。通称wc粒子っていうのは、どうなのかねー」  魔法法史の教科書をぺらぺらと捲りながらの誠二の言葉に、栄は苦笑する。 「しょうがないじゃん、おてあらい、だもん」 「最初に言い出した奴、上手いこと言ったと思ってんだろうなー」 「案外、本人かもよ。話によると、結構愉快な人だったらしいし。愉快っていうか、天才は奇人変人っていうか」 「なんだそれー。でもまぁ」  ぱたん、と教科書を閉じると、誠二は机の上に倒れ込んだ。 「座学ばっかりでつまんないなー。早く実技やりてー」  その言葉のバックで、鈍い破裂音がした。 「……実習棟かー」  魔法実習棟からの爆発音や悲鳴は、魔法学部では当たり前の、日常的な光景だ。実技授業で魔法の使用に失敗した音。  栄達一年生は、授業のほとんどが基礎科目の座学でしめられている。実際に魔法の使用を練習する実技は、三年になってから本格化する。 「爆発しても実技やりたいわけ?」 「実習中は先生が助けてくれるしいいじゃん。火炎系の魔法使えるのなんて、実習中ぐらいだしさぁ」 「まあ、それ系のは魔法士になっても使うのに特別の許可が必要だしなぁ」  危ないから。 「そうだろう? だから、はやく実技やりたいんだよ実技」  ばしばしと、誠二は机を叩く。 「耐えろ、あと一年半ぐらい」 「まったく他人事だと思って。でもまあ、そうだよなー。栄は御厨先生の授業受けたかっただけだもんなー」 「ああ」  こくこくと何度も栄が頷く。首が飛んで行きそうな勢いで。 「じゃあ、寝るなよって話だけどな」  友人の冷たい一言に、 「ソレを言うなって……。マジ今日は失敗したし」  栄は一度頭を抱えたものの、 「でもまあ、御厨先生に結果として褒められたし、だいぶ話したし、いいかな!!」  良い笑顔で頷いた。 「おまえのそのストーカー気質、マジひくわー」  誠二は本気で嫌そうな顔をする。
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