第一章

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「中学からの付き合いの俺がこんだけどん引きしてるんだから、御厨先生なんてマジどん引きだろうな。あんまりはしゃいでると、ゼミいれてもらえないんじゃね?」 「そしたら聴講するわ」 「ゼミの聴講ってなんだよ。本当、お前どんだけ御厨先生に首ったけなんだよ」 「なんだよー。御厨先生いいじゃん」 「まあ、美人だけどさぁ。なんかこう近寄り難いし。俺は、串田さんみたいな可愛い系の方がいいなぁ」  同じ一年のふわふわした女子の名前をあげる。 「串田、串田……」  それに響はしかめっ面を作って呟く。 「……なんで、学年一可愛いと言われている子の顔わかんねーんだよ。ほら、さっき黒板消してた」 「ああ、あれな! 俺が消したかったのに、黒板」 「そっちかよっ」  悔しそうに呟く栄に全力で突っ込む。 「お前の頭の中、本当に御厨先生、一色なのな」 「ああ」  誇らしげに頷いた。 「否定しろよストーカー」 「誠二、御厨先生のこと近寄り難いって言ってたけど、あれでなかなかに可愛いところもあるんだぞ。どじっ子だし」 「ああ、それは」  よく教壇の段差でこけそうになっているのを見かける。 「しかも、こけた後の一瞬のやべ、っていう顔のあと、すぐに真顔に戻るとこ。あれ、絶対バレてないと思ってるぜ。可愛いよなぁー」 「あれ、なんだろう。ますます栄がただのストーカーに思えてきた」 「ギャップ萌えっていうやつ? あんな凄い論文書いた人が、あんなに美人で、クールなのに、どじっ子とか、マジやべーだろ」  引き気味の友人を無視して、熱弁を繰り広げる。
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