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「論文。あー、あれか、御厨先生の博士論文だっけ?」
「そう。俺はあれに感動して、この大学に入ることに決めたからな! もう直接教えを請おうと!」
「なんだっけ」
誠二自身は読んだことはないものの、というか多分読んでもわけがわからないだろうから読む気はしないものの、栄が暑苦しく語っていたからなんとなくは覚えている。
「魔法犯罪対策についてだっけ?」
「ちげーよ」
誠二を睨む。殺しそうな勢いで睨む。
「魔法社会の刑事政策だよ」
「ああ、そっか。ごめん。そんな睨むな……」
心が折れる。
「魔法は犯罪への敷居を低くする。直接手を下さず、現場を見なくても済むから。新たな魔法の研究に余念がない世論の中で、魔法をさらに規制すべきという主張をしていたのに感動したんだよなぁ」
うんうん、と何度も栄は頷く。
「うん、全然わかんないや」
なんでそんなに熱くなれるのか。
「っていうか、博士論文って、先生が院の時に書いたやつだよね」
「ああ」
「それは素直に凄いって思うなぁー」
誠二はのんびりと呟いた。
「だって、それって先生が俺らの年に書いた論文ってことだもんな。凄いよなぁー。それで大学院卒業したとか」
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