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舐められているかどうかは、否定できない。何せ授業中に爆睡された挙げ句、寝言言われたぐらいだし。いくら朝早いとはいえ、怖かったり厳しかったり、とにかく舐められていない教員相手ならば、爆睡したりすることはないだろう。
「……舐められているのかなぁ」
若いから。一つぐらいしか違わないのだ、舐められているのかもしれない。
少し憂鬱になる。が、そんなものは決してメールには見せず、
「おかげさまでうまくやっています」
それだけを返信する。
まったく、あの人は心配性なんだから。
ケータイを机の上に置くと、頬杖をついた。
黒板を消してくれた子。ええっと、串田明菜。あの子は本当、今日も可愛かった。
何度か質問も受けたし、熱心ないい学生なのだが、いかんせん、彼女はマリンの劣等感を異様に刺激する。ふわふわの長い髪の毛を見れば、やっぱり長い髪の毛って女の子らしくていいな、可愛いな、でも似合わないしなぁ、とここ数年ショートカットの黒髪を思い出してうんざりする。黒板を背伸びして消す姿は、背が低いってやっぱり守ってあげたくなって可愛いよな、と大抵の男性よりは高い自分の身長を恨めしくなるきっかけになる。極めつけは、あの一礼していった時の胸。揺れるって、なによ。
マリンは視線を下に落とした。自分の胸部。すとーんと見事にそこには何も無かった。
誰もいないのをいいことに、盛大に一つ溜息。
魔法学部専任講師御厨マリン二十歳。色々と悩みやコンプレックスの多い年頃であった。
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