第一章

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 赤い。  目の前が真っ赤だった。  炎は赤い。血も赤い。  それらにまみれた、家中が赤い。 「お父さんっ! お母さんっ!」  必死に呼んでも、両親は動かない。  両親? きっと両親。もはや、見た目は違っていたけれども。 「なるほどね」  赤い世界に唯一、別の色彩を持つ男、黒衣に身を包んだ男が呟いた。満足したように一度頷き、何かを黒いノートに書き付けている。  それを思わず、きっと睨みつけた。  そんなことしたら自分だって酷い目に遭うかもしれない。冷静になった今なら思う。でも、その時はそんなことどうでもよかった。  こいつのせいでこいつがこいつがこいつがこいつが。  男はつまらなさそうに彼を見ると、つまらなさそうに宣告した。 「君のことを生かしておくのは、実験の一環だよ」  勘違いしないように、と男は冷たく言った。  炎は彼と男の周りと取り巻いているけれども、二人のすぐ傍に来ない。  知っている、これも魔法だ。  全部、魔法だ。  男は何かを呟きながら、指で宙に何かを書き付ける。  これだって魔法だ。  突然訪れた睡魔に支配される。  意識を失うわけにはいかない。このまま、そんなわけには。
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