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次に目覚めたのは、白いベッドの上だった。
親戚の叔母さんが真っ青な顔をして横に立っていた。
全部夢だったらよかったのに。
全部すとん、と理解出来てしまった。
自分を取り巻く世界は変わった。
その日から、彼は「可哀想な生き残り」だ。
史上最悪の魔法犯罪。放火に殺人。重大な犯罪だ。けれども、魔法の行使それ自体ではなんら違法ではない行為。法律の盲点をついた魔法の行使だった。
黒衣の男は言っていた。実験だと。
そう、あれは結局、実験だったのだ。
どんな魔法を使えば法律に抵触しないのか。どこまでの魔法を使えば魔法管理局が動き出すのか。そして、自分はどこまでの魔法を行使することができるのか。
あの男は、それを実験していた。
魔法で心臓を動かされ、延命措置を施され、四肢をもがれ、他の動物の器官をくっつけられ。そこで週刊誌を投げ捨てたから、両親の身に何が起きたのか、正確なところは把握していない。したくない。できない。
ただ、これだけは言える。
魔法なんてなければいいのに。魔法がなければこんなことにならなかったのに。実験ってなんだよ。なんでそんな理由で殺されなきゃいけないんだよ。
魔法を憎んだし、魔法を発見した人間を恨んだ。
周りの同情と好奇の目にも嫌気がさし、心を閉ざしかけていた彼を救ったのは、あの子の言葉だった。
「あなた、魔法士になりなさい」
偉そうに命令されたその言葉。それでも、その言葉が、彼をここまで支えて来た。
「……くん」
叶うことならあの子にもう一度会いたい。
「……まくん!」
だけど、でも、そんなことってあるだろうか。あの子が、敵だったなんて。
「……づまくん!」
あの子が、あの人の血縁で、そして、
「新妻くん!」
耳元で叫ばれた声に、
「はっ、はい!」
裏声で返事をして、慌てて飛び起きた。
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