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途中、脱線したものの、魔法法史の授業はチャイムの音とともに終了した。
軽く挨拶をして、学生達が教室をあとにする。
「ああ、本当。やっちゃったよどうしよう」
栄は小さく呟きながら荷物をまとめはじめる。
ふっと顔をあげると、マリンが黒板に向き直り、いくつか講義の過程で書いた文字を消すためか、黒板消しに手を伸ばしているところだった。
すわ挽回のチャンス!
「御厨先生、黒板俺がっ」
転がり落ちるようにしながら、階段教室を黒板の方へ向かって走り出した栄を、
「御厨先生、あたしやります」
女子の高い声が遮った。茶色い巻き毛に、ふわふわ揺れるピンクのシフォンスカートの女の子。
「串田、明菜さん」
マリンが確認するように名前を呼ぶと、彼女は頷いた。
「じゃあ、お願いします」
マリンは手にした黒板消しを明菜に渡す。
「はーい」
言いながら彼女は黒板に向かった。
背が低いから、少し背伸びをしながら文字を消していく。
「俺が……俺が……」
折角の挽回のチャンスを砕かれて、心が折れる。
「……や、いいから普通に謝ってきたらいいじゃん」
友人、田山誠二の心底面倒くさそうな声を背中に受けて、はっと顔をあげる。
そうだ。いずれにしても授業中爆睡するなんていう大失態を演じたあとなのだ。とりあえず謝らなければ。
マリンは教卓の上のプリントをまとめながら、明菜の姿を見ている。。
「それじゃあ、御厨先生。今日もありがとうございました」
黒板を消し終わって、明菜がぺこりと頭を下げて去って行く。
いまだ!
「御厨せんせ!」
荷物を適当に鞄につっこみ、まとめると、マリンの元に駆け寄る。
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