第一章

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 それは今からおよそ四半世紀前のこと。  日本人大学生、御手洗智恵子は、後に魔法と呼ばれる現象を発生させることが出来る物質を発見した。  彼女が発見した物質を一定の法則で動かすことにより、自然法則を変化させることができる。例えば火種もなく火を起こす、空を飛ぶなど。これが童話やゲームなどで言われる魔法に近い、ということで人々はこれを魔法と呼ぶようになった。  魔法の使い方は世界中に広まり、それは世界の情勢を揺るがした。魔法が広まることにより、犯罪やその他の弊害も現れはじめた。  魔法の力に恐れをなした各国のトップは、魔法の使用に関する国際条約を結ぶとともに、各々国内での魔法の使用に制限をかけることとなった。  日本では、魔法を行使することが出来るのは魔法士と呼ばれる有資格者のみである。それ以外の者が魔法を行使すると、非魔行為として、二年以上の懲役又は十万円以上の罰金に処せられる。  魔法士になるためには、魔法士試験に合格する必要がある。そして、魔法試験の受験資格は、六年制の魔法学部を卒業することが、原則として必要となってくる。  我が国ではこうして受験資格に制限をおくことにより、魔法士の低年齢化を防ぐとともに、その質の向上に努めているのである。  そして栄達が在籍するのが、その魔法士試験の受験資格を得るための、大学の魔法学部なのである。
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