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はっきりとした顔立ちの爽やかな人で、今はとても優しい表情を浮かべている
「時期を少し早めてよかった。少しでも喜んでもらえたなら」
「時期を早める?」
花の咲くタイミングを早めたってこと? 温度管理とかかな?
「俺は緑龍だからさ。特に俺は、植物を操る事には長けているんだ」
彼は当然のように言う
けれど私は彼の言う『龍』という言葉に引っかかりを感じた
まさかとは思うが、もしや本当に龍なのだろうか?
「色々と聞きたい事はあるだろうが、もう少し待て。卓に着いてからでも遅くはない」
赤髪のイケメンがそう言って先を促す
しなる程に花を咲かせた花が、風に靡いて甘い香りを振りまいていた
案内された部屋は、廊下の端にあった
その扉を押し開けると、中ではとても綺麗な女の人が立っていて、深く頭を下げていた
どこの女優さんだろうって感じの人だ
背がスラリと高くて、頭が小さくて、長い髪を結ってそこに簪をつけている
色白で、黒い瞳がとても優しそうだ
「李燕、待たせたな」
「滅相もありませんわ、紅泉様」
大輪の花が綻ぶような笑顔だ
その目が不意に、私に向けられる
なんだか、同じ女の人なのにドキドキした
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