292人が本棚に入れています
本棚に追加
浮かび上がるように明かりの中に出てきたのは、とても綺麗な男の人だった
亜麻色の長い髪に、紫色の瞳をした綺麗な顔立ちの人。一瞬、女の人かと思うくらい
その人はゆっくりと近づいてきて、私の前に膝を折った
「私の名は、紫廉と申します。龍姫様、どうか心を落ち着けてください」
耳にすんなり入ってくる、心地よい声だった
知らない人なのは今倒れている人達と同じなのに、何も怖くない
「あの…」
「貴方の心が彼らを戒めているのです。無礼の数々は私が代わってお詫びいたします。どうか、心を落ち着けて彼らを許してあげてください」
確かに拒絶はした。でもこんな力、私にあるはずがない
でもどう考えても原因は私だ。私の気持ちが現状に繋がっているとしても、否定しきれない
でも、怖い
もしも許してこの人達が自由になったら、私はどこかに連れて行かれるんじゃないか。今度こそ酷い目に遭わされるんじゃないか
緩く首を振って恐怖を訴える
だが紫廉と名乗った彼は穏やかに、とても優しく笑いかけた
「大丈夫、必ず守ります。何人も貴方に害を及ぼすことはできません。どうか、信じてください」
「本当に?」
「えぇ、誓って。だからどうか一言、許すと言ってください」
最初のコメントを投稿しよう!