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転びそうになった所を紫廉が助けてくれて「大丈夫ですか?」と聞いてくれる
男の人にこんなに丁寧な扱いを受けた事は絶対にない。本当のお姫様みたいだ
そのまま促されるように歩き出すと、怖い顔の中年男が睨み付けてきて、低い声で問いかけられた
「どこへ行こうというのだ、紫廉殿」
丁寧な言葉ではあった。明らかに喧嘩腰だけど
怖くなって小さくなると、紫廉が前に出て背中に庇ってくれる
けれどその時の紫廉のほうが、よほど怖い雰囲気があった
明らかに空気が変わった。温度が数度下がったように寒かった
「葵離宮(あおいりきゅう)ですが、何か?」
「その娘には用がある。置いて行ってもらおう」
睨まれて、更に紫廉の後ろに隠れようとする
紫廉も約束通りしっかりと盾になって庇ってくれた
優しいとばかり思っていたけれど、意外と頼りになるみたいだ
「貴方に何の権限があるのです」
「私は龍王代理だ!」
「代理風情が、龍王選定の儀に口出しなど何様のつもりです。龍王候補でもない者が、龍姫に何用ですか。分をわきまえなさい」
ぴしゃりと撥ね付け、これ以上何も言うことはないといわんばかりに紫廉は優しく手を引く
ここに居たくないから、私も素直に従った
「待て!」
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