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山肌を切り開いた道路の脇に、1トントラックが2台と警察車両、さらにJAFの車両が止まっていた。
その脇に、高野清掃のつなぎを着た法子と、もう一人、30代くらいに見える男が警察やJAFの職員に止められて睨み合っているのを見つける。
広井が車を路肩に寄せ、扉を開けた途端、法子の怒鳴り声が響き渡った。
「寄せて来たのはそっちだろ。電話したのは通報するためだよ。全部映像に残ってんだ!!」
いきり立つ体を女性警官が静止する。
騒ぎを横目に、広井は、もう一人の警官に名刺を渡す。
「高野清掃の常務さんね」
警官は、広井に視線を向ける。
「……常務」
法子が広井に声をかけると同時に、言い争っていた男がからんできた。
「彼氏かよ、かっこいいねぇぇ、そりゃー、運転ほっぽいて電話したくなるわけだ」
再び、法子は、男に向かって足を蹴り上げようとして、婦警に静止される。
「やめなさい」
「1トントラックに女の子が乗ってるの珍しいだろうしね、色々言ってくる連中もいるよ」
どうにか場を収めた後、広井は法子が向かっていた焼却炉までついて来ていた。法子は、憮然として、プラスチックの容器を運んでいる。
山頂付近にあるこの焼却炉は、医療系の密閉プラスチックケースのゴミなど含め、高温で燃やすことができる。
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