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プラスチックのゴミ箱の大きさが規格で決められているため、女性である法子の持てないような大きさのゴミにはならない。
とはいえ、広井は運ぶのを手伝うことを申し出たが、法子は頑として断ってきた。
仕方なく、法子がゴミを運ぶのを見つめながら、話しかけていたが、反応は悪くない。確かに法子は基本の顔が無愛想なだけで広井を嫌ってはいないらしい。
「常務も目立つよね、なんか色々言われるの?今日みたいに?それともカッコいいから言われない?」
広井は苦笑した。
「でも、うちの会社他の人もカッコいいでしょ? 山口さんとか秋田さんとか」
「あの二人はスーツ着たらホストだし」
「……社長は好みじゃない?」
「社長は、常務のお姉さんの結婚相手でしょ。好みだとか言ったらお姉さん怒るんじゃないですか? それにお姉さん、常務にそっくりの美人だって聞いてるし」
「似てるとは言われるけどね……」
広井は言葉を濁した。嫌なことを思い出したのだ。
広井は、前の会社を辞めざるを得なくなり、義兄の会社で常務をやっている。
そうなった原因の一つはある意味広井の容姿と言える。
それだけではない、と広井にはわかっているが。そのことを深く考えたくはない。
そんなことがあって数日たったあとだった。
始業前の高野運送の駐車場ではクレーン車が唸りを上げて、動いていた。
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