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レッスンの時間が近づいていた。
剛はちょっと動きが不安だからと言って、先にレッスン室に向かった。
行きたくはないがそうも言ってられない。
俺も動き確認するか...と思い立ち、まだ大分早い時間だったがレッスン室に行くことにした。
食堂を横切っている時、珍しく中庭から女子達の騒ぐ声がした。
特に興味も惹かれなかったので、気にせず俺はまっすぐレッスン室へ歩いた。
食堂からレッスン室に続く廊下で、凄い勢いで走ってくる人物にぶつかった。
「「いたっ!」」
相手が勢いで尻餅を付いたようだったので、そちらに目をやると智が床に転がっていた。
何やってんねん、と声をかける間もなく、智は起き上がりまた駆け出していった。
「なんやねん、アイツ...」
ぶつかった肩を抑え、ブツブツ文句を言いながらレッスン室のドアを開けると、そこにはボロボロと涙を流す斎藤がいた。
「え?なにごと?」
一瞬訳が分からずドアを閉めてやろうかと思ったが、思い直し部屋の中に入る。
すると斎藤は俺の方に向かってきた。
いやいやいや、勘弁してくれ。
俺は間違っても抱きつかれたりしないよう、奥の方で神妙な顔をして立ち尽くしている剛を見つけ近づいていった。
「なにがあってん?さっき智が凄い勢いで駆け抜けていったけど」
「さぁ...その人に聞けばわかるんちゃう?」
珍しく怒っているようで、不機嫌さを隠そうともせず顎で斎藤をさす。
こわぁ...剛さん怖いですわぁ...。
見たことの無い剛の顔に俺はちょっとビクついた。
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