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「智ちゃん、追いかけなきゃ...」
指された斎藤は、ハッとしてレッスン室を出ていこうとしていた。
「匂坂くん、一緒に来てくれないかな…」
「は?なんで俺...」
「えぇやん、行ってやりぃよ。ともちゃんの事も気になるやろ?ちょうどえぇやん」
不機嫌な剛に負けて、俺は斎藤と一緒に智を探す事になった。
斎藤は多分中庭だと断言して、迷いなく中庭に向かって走り出す。
なんで中庭...と思ったが、あまりに自信満々に言うので、言われるがままついていく。
すると中庭、以前智を見かけたあの分別ゴミのカゴがある場所で、何かを抱えて呆然としている智がいた。
「智ちゃん!」
斎藤が声をかけると、智はビクッと反応したが顔をこちらに向けることはない。
なにしとんねんアイツ...。
俺が不審な顔で見ていると、斎藤が俺の顔をチラッと確認した後智に向かって叫んだ。
「やっぱり...やっぱり智ちゃんだったんだ!」
その言葉に智はハッとこちらを向いた。
その顔は今まで見たことのないくらい血の気が引いていて、目は何も映していないようだった。
「何の話やねん。智、お前ここで何してんねん」
訳が分からず、心配になった俺は智に少しずつ近づく。
その前に斎藤が智の元にたどり着き、智が抱えていた物を奪う。
「あっ...」
智はほんの僅かに聞こえる程度の声で、驚きを示した。
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