2人が本棚に入れています
本棚に追加
自宅のアパートに戻ると、散らかった玄関に傘を置いた。
あの後、結局また激しく雨が降り出し、半透明の傘はびしょ濡れになった。
杉本は発泡酒とつまみをビニール袋から出し、万年床に寝転がるとコミックスを開いた。なまぬるい発泡酒で喉を湿らせながら没頭していると、呼び鈴が鳴った。
出るのが億劫だったので、彼は無視した。また呼び鈴が鳴る。だが無視。それでも呼び鈴。
「うるせぇな!」
苛立ちの頂点に達した杉本は、怒鳴りながら玄関へドスドス向かった。
そして人の楽しみを邪魔する不届きものの顔を拝もうと、ドアスコープに目を当てようとした、その時だった。
ドアスコープから何かが飛び出した。
細い棒、いや先端が鋭利な刃物だ。アイスピックに似たそれが一瞬で突き出て、杉本の眼球の、酔いでまっかに充血した眼球の一ミリ手前で止まった。
最初のコメントを投稿しよう!