ヌスマセ

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 自宅のアパートに戻ると、散らかった玄関に傘を置いた。  あの後、結局また激しく雨が降り出し、半透明の傘はびしょ濡れになった。  杉本は発泡酒とつまみをビニール袋から出し、万年床に寝転がるとコミックスを開いた。なまぬるい発泡酒で喉を湿らせながら没頭していると、呼び鈴が鳴った。  出るのが億劫だったので、彼は無視した。また呼び鈴が鳴る。だが無視。それでも呼び鈴。 「うるせぇな!」  苛立ちの頂点に達した杉本は、怒鳴りながら玄関へドスドス向かった。  そして人の楽しみを邪魔する不届きものの顔を拝もうと、ドアスコープに目を当てようとした、その時だった。  ドアスコープから何かが飛び出した。  細い棒、いや先端が鋭利な刃物だ。アイスピックに似たそれが一瞬で突き出て、杉本の眼球の、酔いでまっかに充血した眼球の一ミリ手前で止まった。
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