プロローグ

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……2011年…秋…… 秋の少し肌寒い中、オフィス街にあるオシャレな喫茶店があった。 喫茶店にはオープンテラスがあるが、誰も座っていない…肌寒いので昼間にもかかわらず誰も座っていないのは、そのためだ。 店内のクラシカルな空気に身を包みながら、月島葵(つきしまあおい)は一人で、アイスカフェラテを飲んでいる。 葵のかもし出す、インテリ感とその綺麗なルックスが、店内の空気と実に合う。 女性店員とOL客が、葵に見とれている。 「ふむ…やはりコーヒー6の牛乳4の割合でシロップ3つが…一番いい…」 クラシカルな店内に、クラシカルな音楽を堪能しながら、お気に入りのアイスカフェラテを口にする。 「相変わらずの甘党だな…」 店内とアイスカフェラテを堪能する葵に、一人の男性が話しかけてきた。 話しかけてきた男性は葵の向かい側に座った。 「お久しぶりです、歩さん…」 歩と呼ばれる男性は、渡辺歩(わたなべあゆむ)…医師免許を持った、戦場カメラマンだ。 葵とは今年の夏に知り合った。 彼も葵とは違うタイプだが、いい男で…華奢な体つきに見えるが、実は筋肉質で肌が黒いので、いい意味で男くささがある。 歩は店員にホットコーヒーを注文した。 「で…歩さん…いつ帰国されたのですか?…」 「3日前だよ…変わらず元気にやってるかい?」 葵は癖のある髪を人差し指で、クルクル回しながら言った。 「特に変化はありません…退屈なものです…」 髪をクルクル回すのは葵の癖だ。 注文したホットコーヒーがきたので、歩は砂糖とミルクを入れ、かき混ぜながら言った。 「平和でいいんじゃない…俺は戦場カメラマンだから…」 「そうでしたね…失礼しました…」 「いや、気にする事ないよ…ところで美夢ちゃんも元気かい?」
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