プロローグ

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喫茶店を出てタクシーを拾った二人は、 九条が入院している、東鷹医大(とうおういだい)へ向かった。 若者やビジネスマンで賑わう街を、ふたりを乗せたタクシーは疾走する。 15分ほどで目的地に到着した。 タクシーを降りた二人は、受け付けに向かう…。 受付の女性に、歩は言った。 「九条司の病室は?」 受付の女性はしばらく、リストらしき物を確認して言った。 「九条様への面会は断るようにと、言われていまして…」 予想通りの答えだった。 九条は有名な実業家で、現大臣の息子だ…素性のわからない、葵と歩を簡単に通すわけがなかった。 「困ったなぁ…」 すると、こちらに一人の男性が向かってきた。 「渡辺様に…月島様…来てくださったのですか…」 歩はその男性に言った。 「山村さん…」 二人に話しかけてきたのは、九条の秘書、山村だった。 山村は今年の夏…葵達が乗り込んだクルーザーの船長だった人物だ。 夏と変わらず、物腰が低く…やさしい表情をしている。 「お久しぶりです…お二人とも」 山村はそう言うと、受付の女性に言った。 「このお二人は九条社長のご友人ですので、私が…」 受付に説明すると、山村は葵と歩を、九条の病室に案内する…。 道中、山村が言った。 「マスコミ対策のため、VIPルームを利用しています…」 歩が言った。 「わかります…あいつ有名人だから……それにしても、俺はこの病院出身なのにさぁ…素性不明って、失礼じゃない?」 「それはお前の見た目が怪しいからだ…」
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