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 窓の外で、バババババと激しい音がした。駆け寄った窓から外を見ると、激しい土ぼこりだ。校庭の砂が舞い上がって、小石がピチピチと窓ガラスに当たった。竜巻か? 安田は窓から離れた。  そうではなかった。  自衛隊が、保健室に踏みこんできた。  誰かが、通報してくれたらしい。  窓の外で聞こえたのは、ヘリコプターのプロペラの音だった。  安田は、自衛隊員の腕に抱かれて……射精した。なぜ、このタイミングで。安田は、恥辱につつまれた。恥ずかしさのあまり、安堵のあまり、精神の均衡が崩壊して、安田の目から涙が流れた。  緑色系のカーキ色の迷彩服を着た、日焼けした顔の、訓練で鍛え上げられたたくましい身体つきの、若い陸上自衛官に抱かれて射精した安田を、生徒の西島は、ぼうぜんと見ていた。  全裸同様だった安田の身体は、すぐに救援毛布にくるまれた。 「大丈夫であります。人間は、危機に際しては、そのようなこともあると聞いております。生徒を守った貴方の行いは、立派であります」 と、若い自衛官は、敬礼して言ってくれた。  自分を恥じて、責め、涙を流しながら咆哮する安田は、それで、報われたような気がした。
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