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 安田と西島は、検査のために、二階建て新幹線Maxイカ号で上京し国境のトンネルを抜けて、防衛省の病院に来診した。  検査や問診のあと、軍医は、 「だいぶ、回復してきたようですね」 とうなずいた。  目を見交わして微笑み合う安田と西島に、 「まだまだ油断しないように」 と軍医は厳格に注意した。  病院の検査のあと、二人はイカ研究所に行った。古びた煉瓦造りのイカめしい建物で、関係者以外、立ち入り禁止の学術的な雰囲気だった。  受付に名前を書き、マッドサイエンティストを呼び出してもらった。二人は、マッドサイエンティスから、話を聞いた。  捕獲された巨大イカは、研究のために飼われるとも、標本にされるとも言われたが、結局海に返されたらしい。イカは、長時間、陸に上がっていたことで弱っていたようだ。 「イカは深海に帰るだろう」 と、マッドサイエンティストは言った。 「深海、というとダイオウイカですか?」 西島が聞いた。 「その変種だね。普通は、陸上で人を襲ったりしないから。まして、人相手に生殖活動もしないし、粘液が媚薬なんてこともない」 マッドサイエンティストは答えた。 「イカの性別は、オスですよね?」 西島は確認した。 「そうだね。繁殖目的でないのも変わっている」 「ゲイのイカなんですか?」 と、安田が質問すると、 「あなたは?」 とマッドサイエンティストが安田に聞いた。 「え、私がですか? さあ……」 安田は、自分にほこ先を向けられて、面食らった。
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