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「私はイカが好きです」 マッドサイエンティストは、平気でハズれた答えを返してきた。 「僕もイカが好きです」 西島も呼応した。  三人の間に微妙な空気が流れた。  安田は、西島の答えに、もやもやした。マッドサイエンティストの答えは、どうでもいい。さもありなん。人間などどうでもいいのだろう。だが、西島は、自分のことが好きなのではなかったのか? いや、それもイカのせいだったのか? と安田は、やきもきした。西島が、マッドサイエンティスト色に染まっているのでは、と安田は危惧した。  それとも、自分はイカなのか? いや、そんな考えは、だいぶイカれている。  マッドサイエンティストと西島が、同じイカ好きで、盛り上がってしまったらどうしよう、などと案ずるのは、まだイカで頭がイカれているせいなのか?  だが、そこは、マッドサイエンティスト。マッドサイエンティストと西島は、同じイカ好きにもかかわらず、たいして意気投合しなかった。いや、本人たちの中では、盛り上がっているのかもわからないが。 「吸盤も触れて痛くないように変化しているし、一言で言うと、エロエロなイカだ」 マッドサイエンティストは言った。 「はあ……」 西島は、幼なじみの唯一の親友を、エロエロなイカ呼ばわりされて、不服そうだった。マッドサイエンティストも、さすがに、西島の落胆を見てとったのか、少しイカをフォローして言いなおした。 「でも、君のことを覚えているなんて、賢いイカだ。イカは、二日くらいの記憶はあると言われていたが、そんなに長期間の記憶を保持していたとは」 西島のへの字だった口角は、上方修正された。どうやら機嫌をなおしたようだった。
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