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そこで安田はマッドサイエンティストに疑問を投げかけた。
「やはり、西島が幼少期に会ったイカと同一の個体が、あの巨大イカだったんですか?」
すると、西島が口を開いた。
「イカは、ボルネオ島から世界最大の暖流である黒潮にのって北上し、さらに対馬海流にのって、ここまできたのだと考えます」
西島は、マッドサイエンティスト相手に、自説を展開しだした。
「新しいね」
マッドサイエンティストは、ずり落ちる眼鏡を指であげて、
「佐渡にダイオウイカがよく打ち上げられるから、生まれは日本海かと思ったんだが」
と言った。
安田も、何か教師らしいことを言おうと思い、
「南沙諸島のあたりですか。あのあたりも、領有海問題でキナ臭いですからね」
などと話に加わった。安田の発言に対して、マッドサイエンティストが、
「すると、なかなか、調査は難しいかな。謎は深まるばかりだ」
と応じ、安田は二人のイカ話に初めて加われた気がして、満足した。
西島は、イカについての研究をしたいとマッドサイエンティストに言い、マッドサイエンティストは、西島を励ました。研究所の紀要の抜き刷りなどをもらい、西島は喜んだ。
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