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 だが、触手は、安田の脚に巻きつき、窓の方へと少しずつ引きずっていった。 「あぁっ!」 安田は、手で触手を解こうとしたが、ヌルヌルすべるばかりで、いっこうに、つかめない。それどころか、気味の悪いイボイボした吸盤が安田の手に吸いつき、安田の手を捕らえてしまった。無数の吸盤が、列をなして、触手の表面に、ひくひくとうごめいていた。その、目のような不気味な吸盤の列を見て、安田は、くらくらした。 「先生……しっかりしてください!」 西島の声が、安田を呼んだ。西島の顔が間近にあった。 「すまない……」 気を失った生徒を助けようとして、その自分が、一瞬、気を失ってしまったのだ。  こんなことではいけないと、安田は、自分を叱咤した。  生徒が、ほっとした顔を見せてくれたのは、束の間だった。 「うわぁっ!」 生徒が叫んだ。生徒の西島は、かっと目を開き、窓の方を見ていた。  安田は振り返った。窓の外に、安田が見た物は、直径三十センチほどもありそうな、巨大な目玉だった。目玉には、まぶたのようなものがあり、まるで人間の目のようだった。  その妖怪の巨大な目と、安田の目が合った。
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