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「あ……」
触手の先が、安田のワイシャツの中に入ってきた。
「あっ、あぁっ」
ワイシャツの下を、触手が這い回る。巨大な目玉は、じっと安田を見ている。
「見るな! やめてくれ!」
化け物に、ことばが通じるわけはないのに、安田は声をあげずには、おれなかった。
びりっ、びりりっと布地が裂けてきた。
「あ……っ」
安田は、触手のもたらす快感に耐えきれずに、西島を抱いた手を放してしまった。快感に耐えきれず、手の力が抜けただけではなかった。快感を感じていることを、生徒に知られたくなかったからだ。それほど強い快感が、安田の身体を襲った。
今までに、こんなに感じたことが、あっただろうか。いや、ない。初めての性体験のときも、何度かの恋人との経験でも、こんなに感じはしなかった。恋人と別れてしまったのも、安田の性技がまずかったせいだろうか、と今さらながらに思い返された。
こんなに強い快感というものが、あったのか。
自分では、相手に、また自分も、これほどの快感を与えることも、感じることもできなかった。
安田は、けしてもてないわけではなかった。むしろ女性にはもてた。ときに、男性にも。男性とは、経験するまでにはおよばなかったが。
そして、生徒たちにも。生徒の何人かには告白された。困って相談した友人には、うらやましがられた。しかし、結局、当然ながら、数々の申し出を、安田は断っていた。
自分は、淡白なのかもしれない、そう思っていた矢先だった。
こんなに強い快楽があったとは。自分の知らなかった、このような性的快楽。
これは、いったい、何なのだ!?
安田の穂先は、とうに勃起していた。
正確には、正直に言えば、西島が、触手に襲われているのを目撃したときから、安田の雄は反応していた。
男子生徒の淫らなようすを見て、いや、淫らですらない、襲われて危機に陥っているときにもかかわらず、不謹慎にも、未成年の男子生徒の姿を見て自然勃起する自分。そんな、いかがわしく変態的な自分の感覚を安田は、恥じた。
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