血濡れの九重狐

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絵にも描けない美しさ。美しさを表現するのにそんな言葉を使った歌詞がある。  それがどれほどの美しさかは分からない。でも絵にも描けない程度の美しさならそれはその程度の物なのだろう。  本当に残酷な美しさというのは見るに耐えない美しさなのだ。 矛盾していると思われるかもしれない。でも、それは確実に存在する。見ることすらおこがましいと思ってしまうほどの圧倒的な美。  それは見る者の価値観を壊し自我を崩壊させる。ソレを見てしまったことで、ソレの存在を知ってしまったことで自分が如何に矮小で愚劣な生き物なのかと理解してしまう。  存在していることに罪悪感を覚えてしまう。自分自身が心の底から好きな人間も嫌いな人間もその中心には自分がある。人が世界と関わるには自分という個人を介してした関わることはできない。当然だ。自分は自分という個人なのだから。  しかし、ソレを知ってしまえば人々は自分自信を失う。自分とソレとの境界が曖昧になり、全てをソレの為に投げ出したくなる。差し出したくなる。ソレが求めていようといなくともだ。  つまり、この世で一番美しい物は者は見るに耐えられない存在なのだ。
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