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Episode 04 過去と未来のはざま
文化祭が終了し、名残を惜しむ間もなく学校内は臨戦態勢に突入した。生徒会会長選が始まるためである。
外部に向けての一大イベントが文化祭であるのに対し、学校内で最も重要なのが年に二回行われる生徒会会長選挙である。
三日間の選出期間を経て選挙管理委員会が発足。投票日の告示があった頃には緊張度合いがピークに達し、一年生たちを怯えさせるほどであった。
事前の下馬評では、三年生が悲願の政権奪取を図り現体育部長鹿島敬之を担ぎ出すのではないかと囁かれていたが。
立候補届出日に受付に届出たのは現生徒会長一ノ瀬誠のみ。他に数名が反三大巨頭派の支持を取り付けようとぎりぎりまで動いていたようであったが結局出馬を断念。現会長一ノ瀬誠の無投票当選が確定した。
ここに、青陵学院高等部生徒会七代会長一ノ瀬誠の二度目の続投により第三次一ノ瀬政権が発足することになった。
生徒会長の指名によって決まる専門委員会委員長に若干の入れ替わりがあった中、執行部メンバーの一部をも選出しなおさねばならない事態が発生した。
「おれはもう駄目だ。かんべんしてくれ」
現副会長長倉のリタイアによるためだ。
「ふらふらふらふら、すぐに姿を暗ましやがって。おれにはもうあいつのお守りは耐えられない」
胃を押さえ、涙ながらに訴える長倉に、中央委員会委員長の中川美登利も風紀委員会委員長の綾小路もなにも言えなかった。
「さて、どうするよ。なんなら、あんたがやる? やってることは変わらないじゃない」
「おまえさんが兼任するというのはどうだ?」
「は? それこそ職権の集中だって批判されるよね?」
醜い押しつけ合いを繰り広げるふたりの横から坂野今日子が言った。
「この際、一年生から任命してはどうでしょう?」
「それなら森村か片瀬を寄越したらどうだ。なんなら池崎少年でも……」
「池崎くんはダメ」
ぴしゃりと美登利がはねつける。しん、と場が凍りついたとき、おずおずと扉が開いて一年生らしい男子生徒が顔を出した。
「すみません。あの、生徒会室に行ったら誰もいなくて。通りすがりの人にこちらに行けばいいって言われて。あの、オリエンテーリング部の者なんですが、予算のご相談に……」
美登利と綾小路が同時にひらめく。
「オリエンテーリング部って、普段は校内を野外に見立ててゲームしたりしてるよね?」
「あ、そうです。頻繁には野外で活動できないので」
「校内のあらゆる場所に詳しかったりするのか?」
「ええと、そうですね、それなりに」
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