4人が本棚に入れています
本棚に追加
到着した俺は物見遊山にあっちこっち見回しながら…
『ここが噂のゲイタウン゛新宿二丁目゛なんだー!』と感心したように呟き、これから渡ろうとしていた信号機の前にいた。すると反対側の歩道を、うつむき加減に歩いて来る自分と同じくらいの青年の姿が目に入ってきた。俺はあいつも、そうなんだろうか!?と思いながら時間も時間だっただけに、ほうっ、真っ昼間から、やって来る奴もいるんだ!と好奇心、半分に目で追っかけていった。とその瞬間、脳天を直撃されるような衝撃に襲われた。同時に忘れようとしていた部室のシャワー室でのことも、ありありと蘇ってきて…
『似てる!?高校時代のあいつを、そのまま大人にしたような奴だ!まさかとは思うが…』と俺は信号機が青になると同時に、今の人影をダッシュで追った。途中、通りを曲がったのも探し、さらに追い駆けていった。息をハァーハァーとさせながら後ろまで追いつくと居たたまれなくなり…
『お、お前だよな!高校時代、部室のシャワー室で俺と石鹸の泡ブクブクさせながら…』とそこまで言うと、そいつも分かったようで後ろ向きのまま、突然、足を止めた。そして俺の問いに、ガクッと頭をうなだれるように返事をしてみせた。
『やっぱり、そうか!お前だったんだー!』と俺は言う間もなく今まで抑えてきた気持ちがわっと爆発するかみたいに抑えきれなくなり、そのまま奴に雪崩れ込むようにし後ろからギュッと抱きしめてやった。すると、それに応えてくるかのように奴も腹の前で抱きしめた俺の手を両腕でしっかりと抱きしめてくれたみたいだった。こういう場で再会すること自体、もう何の言葉も説明もいらなった。抱きしめる背中越し奴が男泣きに体震わせてるのも感じた。それを肌で感じながら思いはおんなじだったんだと俺は感じた。そして奇(く)しくも奴が俺が新宿二丁目で初めて知った男にもなった。また不覚にも同じ学年ながら言葉を交わすのも許しがたい仲だっただけに互い名前さえ知らなかったことから改めて名前を聞き呼び合えたらとも思った。新宿二丁目のメインストリート゛新宿二丁目仲通り゛のど真ん中で俺達は時間が経つのも忘れ十年分の思いをぶつけ合うかのようにし人目もはばからず堅く熱く抱きしめ合っていた。気づけば昼から夕方、夜になっていた。そう、そして今、高校時代のあの日から時間が止まったようにお預けになっていた恋が今はじまる! 終
最初のコメントを投稿しよう!