第3章今でも爆発しかねない恋の予感を抱(いだ)きながら…

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 そんな自分でも、どうしようもない気持ちを抱きながらも、すでに十年が経過しようとしている今、何を望んだところで奴が、高校時代が戻ってくる訳もなく、それこそバカみてぇな話。奴だって、とっくのとーうに忘れ結婚でもし家庭を築き幸せに暮らしてるに違いないと十年を機に俺も、こんな状況から抜け出したいと一人あがいてもいたんだ。  このままじゃ結局、独り相撲に終わり、辛くなるばかりだし第一肝心な奴が現れないことには、したくったって恋もはじまらねぇ!! そんな、恋したくても出来ねぇ恋の寸止まり状況が、ずっと続いていた。そう思うと、人のせいにする訳じゃねぇけど、こんな状況にさせられた奴のことが憎くって許せなくって今にも爆発しそうになる一方で、奴に対する恋しさも募るという、ジレンマ状態にもあったんだ。 高校時代だって結局、彼女も作れず終わってしまい、そればかりか体、洗う時だって石鹸の泡を泡立て過ぎると、また奴とのことが思い出されてくるんで、なるだけ泡立てないようにしたりと結構、神経使って大変だったんだ。とにかくよくもわるくも奴に翻弄された俺の高校時代、青春時代だったって思ってる。だけど、居もしない奴の亡霊に、これ以上振り回されるなんて、もう、まっぴらご免!十年を機にこっちから奴とは縁を切ってやろうかと思ってたところなんだ。  そんな矢先、これは天からの助けか!?と思えるような情報が飛び込んできた。噂では聞いていたが、たまたま見ていたテレビでやっていた日本最大のゲイタウン゛新宿二丁目゛のこと。俺はそれを食い入るように見て、そんなところがあるんなら是非、行ってみたいと思ったんだ。そう、それに奴とは縁がなかったんだ。そう無理無理、思い込ませることで納得させ、そんな奴のことを忘れるためにも行こう。そこへ行けば何か新しいことがはじまるかも知れないと、そう思うと俺は堪らなくなり今度、仕事が休みの時、行ってみようと思ったんだ。    そして、やって来た、憧れの!?゛新宿二丁目゛同時にそれは俺の゛新宿二丁目デヒューの日゛にもなった。これでやっと奴との恋の呪縛や恋の独り相撲からも解放される、やったー!とばかりに自然と鼻歌まで出てきて俺はルンルンだった。それは、もしかすると新しい恋の予感からかも知れなかったが、とにかく足取り軽く最寄り駅の地下鉄を出ると新天地となるかもしれない゛新宿二丁目゛へと俺は向かった。
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