第2章以来、シャワー室で奴が来るのを待つようになった俺!

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だけど俺がシャワーを浴びるのを狙って、奴がやって来ることはなかった。それでも来る日も来る日も俺は健気(けなげ)にも待ち続けたが非情にも奴がシャワー室に現れることは二度となかったんだ。 …かといって奴と顔をまったく会わせない訳でもなかった。そこは同じ高校に通う者同士、学年も同じで、学校内で見掛けることもあった。だからと言って急に近寄っていき『お前、何であれ以来、シャワー室に来ないんだよ!』みたいなこと、とても言えるはずもなく遠目に確認しながらもお互い、そんなことなかったかみたいに通り過ぎてくだけだったんだ。  それでも、あの時の効果は十分にあったのか!? これまでなら廊下すれ違うだけでもお互い火花を散らし合い今にも食ってかかりそうになったものも、あれ以来、まったく、そんな気配もなくなり、逆に別の意味で意識するようになってか目も合わせず伏せ目がちに通っていくようになったんだ。逆にそれこそが幻想なんかではない奴がシャワー室へ押し入って来た唯一の証拠であると俺は思ったくらいなんだ。しかし声を掛けようにも奴はそんなこと、まるでなかったみたいに俺の前を通っていくだけだったんだ。 それに、もともと奴とはそりが合わなく連絡しようにも、連絡先さえ知らず、それが返ってあいつに対する思慕へとつながった。こんないけすかない奴もいたもんだと、これまでずっと思ってきたが、それがたった一度のあんな出来事で180度、ひっくり返ってしまうとは神様でも知らなかったと思う。 とにかく、どうあれ一度は俺がシャワーを浴びる場を嗅ぎつけやって来たんだから知らねぇ訳はねぇ。いつだって、この間のように俺がシャワー浴びてる場所に乗り込んで来たとしてもおかしくはなかった。だけど待てど暮らせど奴があの時のように俺の前に姿を現すことは本当になかったんだ。  結果としてそうだったんだが、俺は健気にも奴のことを待ち続けたし、シャワー室は幾つかあってシャワーを浴びる振りをしながら誰もいなくなるまで待っていた。カーテン越し、誰かが近づいて来ると奴じゃないかと思いながらも。しかし、それが別のところへ行ってしまうと、ため息まじりにがっかりもした。それでも諦め切れずまた、あんな事が起こるんじゃないかという思いで俺は本当に卒業するまで待ち続けたんだ。
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