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 珪の傍らに立ち、今夜のメニューを覗き込む。用意されていたのは、大皿一つだった。そこに盛り付けられていく品々を確かめて、桜蔵は表情を輝かせた。  珪が、桜蔵を見下ろし、口角を上げた。 「乾杯するだろ?」 「当然!」  桜蔵は踵を返し、足取り軽く洗面所へ向かった。機嫌よく鼻歌を唄う合間に顔を洗って、今回の仕事の成果ににんまりと笑った。 「なにをニヤニヤしてんのぉ?」  開けっ放しだった扉から、珪が桜蔵を観察するように立っていた。 「あ、珪ちゃん」  鏡越しに目が合った。彼の手元に酒瓶二つを見つけ、桜蔵は手にしていたタオルを戻して振り返る。 「どっちで乾杯する?」  珪が、顔の高さに掲げた二つの酒瓶を、桜蔵は、交互に見つめた。 「右!!」 「だと思った」  ソファー前のローテーブルに、大皿に盛り付けられたおつまみと、珪が選んだ二つの酒と、うすい青色の緩く波打つグラスが並べば、乾杯の準備は万端だ。 「E‐idファイルの奪取成功に」  桜蔵が、グラスを掲げる。 「俺たちの才能に」  ニヤリと笑って、珪もグラスを掲げた。 「かんぱーい」 「かんぱーい」  グラスがカンと高い音を鳴らした。  桜蔵が、喉を鳴らして、一気にグラスを空けた。     
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