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「あっ!」
珪は静かな驚きを、桜蔵は歓喜を表して。
二人の視線の先には、「E‐id」の文字があった。
E‐idはEyesroidの略だと、彼らは理解していた。
珪は息を呑み、その文字へマウスのポインターを動かす。文字の上をクリックすると、ディスプレイに小窓が出現した。
――― PASSWORD: ―――
二人は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
「俺やるっ!」
「はいはい、どーぞ」
珪はPCを桜蔵へ向け、席を譲ると、残りの豆大福を手に取った。
代わりに桜蔵がチェアに座り、慣れた様子で文字を打ち込む。ディスプレイにアスタリスクマークが並ぶと、一度画面は真っ暗になり、直後、画面いっぱいに、別窓が開いた。その上半分ほどを、つらつらと埋めていく記号。
「あったぁ~~」
静かな呟きの中に、桜蔵の小さな体に収まりきらない喜びが溢れていた。
珪は、カップを手に取り、一口飲んで息をついた。
「カラ振りじゃなくて良かった…」
「だから、あるって言っただろぉ」
嬉しくて仕方ない桜蔵は、ニコニコとディスプレイを眺めている。
「ホラ、代われよ。それ残しとくんだから」
「あーい」
二人は場所を入れ替わり、珪が再びチェアにおさまる。
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