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「コーヒーと大福、サンキューな」
「おうっ」
桜蔵は、ソファーに戻った。
ソファー前のローテーブルには、白い布が敷かれ、そこに様々な部品が並んでいる。いつも忍び込むときに使う機器のメンテナンスだ。磨き上げて、改善して、組み立てる。半分が、終わったところだ。
後ろから、珪が大きな欠伸をするのが聞こえ、思わず笑みがこぼれた。
「今更だけど、桜蔵?コレ、フェイクとかじゃないよな?ホンモノ?」
声が近づき、珪が、桜蔵を通り過ぎ、彼の正面に座った。
桜蔵は、得意げに笑って顔を上げた。
「誰に言ってんのぉ?」
「その顔で言われると、スゲー説得力…」
大きな瞳が、じっと珪を見つめている。
桜蔵の瞳は、大きいだけではない。生まれついてのものなのかは知らないが、やたら強い光を放つのだ。否と言わせないほどの強い光を。
桜蔵は、すでにもう愛用の道具たちの手入れに戻っていて、力強い光を宿す瞳も、今はただ楽しげに輝いている。
「しょうがねェよなぁ……」
「ん?何か言った?」
珪の小さな呟きが半端に伝わって、桜蔵はきょとんとして珪を見た。
「いや、別に?」
「そう?」
桜蔵の興味は、すぐに目の前の作業へと移った。
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