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 ソファーに身を起こした桜蔵は、とりあえず、時間を確認するものを探して、辺りを見回した。薄暗い中に、オレンジの明かりが控えめに広がっていた。  ソファーの背越しに珪を見つけ、キッチンに立つ背中に声をかける。 「珪ちゃん」 「あ、おはよう、桜蔵」  肩越しに振り返り、珪はまた調理に戻った。  珪にかけていたブランケットが、足元で固まっている。 「顔、洗って来いよ。そろそろ飯だ」 「はーい」  まだ、少しボンヤリする頭で立ち上がった桜蔵は、洗面所ではなく、キッチンへと足を向けた。
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