1:リュウ

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 樹李の優しい声を聴きながら、竜は遠くを見つめた。  樹李は続ける。 「竜の中の疑問は、案外簡単に答えが見つかるものかもしれないよ?」  答えは、すぐに言葉にならなかった。  しかし、鳥居をくぐった時に抱いていた疑問は、ずいぶんとポジティブなものに変わっていた。幼いころから通っているこの場所と彼らと、そして、自分自身のことを、もっと知りたいと――――。 「それで?今日は、どうすんの?」  縁から投げ出していた足をぶらぶらさせて、海吏が、実に楽しげに聞いた。 「せっかく学校サボってきたんだし?」  海雷も、ニヤリと口の端を上げた。 「勝負、する?」  竜は、前を見据えたまま、口角を上げた。 「おう!」  そして、縁から立ち上がり、二人を体ごと振り返る。 「今日は勝つ!」  宣言する竜へ、樹李は、優しい眼差しを送った。  海吏と海雷は、彼女の挑戦的な瞳をまっすぐに見つめ返し、徐に立ち上がった。 「意気込みだけは、立派だな」  海雷が、竜を煽る。 「お前、今の勝敗わかってんの?」 「わかってるよッ。七十二敗四勝と、二引き分け!!」  意地になって言い返すほどの立派な勝敗ではないことは、竜自身よくわかっていた。  海雷は、それを見下すように鼻で笑い飛ばした。 「奇跡の四勝と、時間切れの二引き分けだろ?」 「でも、勝ちは勝ちだろ!兄ィが勝ちだって言ったんだから!お前だって負けてんだからな?!」 「よーし、そこまで言うなら、実力の差を思い知らせてやるよ」  見下すように笑う海雷に、一抹の不安を感じ、樹李が二人のやり取りに割って入った。 「ほどほどにしとけよ?ケガするぞ?竜だって弱いわけじゃないんだからな?」 「大丈夫だって。ただの稽古だろ?稽古」 「ホントだろうな?」  すっかりけん制し合っている二人を、心配そうに見つめる樹李は、小さくため息をついた。  海吏は、楽しげな笑みを浮かべて、樹李の隣に座り直した。 「これじゃあ、一回戦はVS海雷だね」 「煽るのが上手いからな、あいつは」 「計算なんだか、天然なんだか」
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