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本当は、離れようだなんてこれっぽっちも思っていない。なにを手放してもこれだけは離さない。守られた約束なんてひとつもない。こんな自分でもひとつくらい約束を果たしたい。
――ほんとに結婚する?
――うん。
半年ぶりに触れた肌は甘く懐かしく、それだけで頭がくらくらした。
「やせたな」
「そう?」
「うん」
もっとふっくらしてもいいのに、胸が減らなくて良かったけれど、思いながらしつこくお腹を撫でていたら手の甲をつねられた。
頬に冷たい指の感触、瞳が間近で揺れて、キスがくる。そこでやせた体を気遣う気持ちはきれいに消し飛んだ。むしろいつもより性急に求め始めてしまう。
重ねたくちびるの合間から吐息がもれて、身じろぎしながら肩に縋りついてくるその手が既に熱い。そこを撫でると顔を背けて息を跳ね上げた。濡れてくるのと同時に声がもれ始める。
たじろんで体をねじって足を閉じようとするのを無理やりこじ開け、指を上下に滑らせると更に声がなまめかしくなった。
知っている。彼女はこうやって撫で上げられるのが好きなのだ。恥ずかしそうに腕で顔を隠して、それでも身悶えするのを止められずにいる。
我慢するからだよ。いつだって彼女はそう、我慢して我慢して、爆発させる。傍迷惑なことに。こういうときのそれはかわいくて大好きだけど。知っているのは自分だけ。
やがて息を詰めて静かになった後、泣きわめくような嬌声をもらして体をよじった。足が震えてイッたのがわかる。
こうなってようやく彼女は我慢をやめる。余韻に身じろぎしながら、ゴムをつける彼を見る。
「きて」
言われなくても。全身を震わせながら彼女は彼を受け入れる。腕を首に絡めてしがみつきながら動きに合わせて高く低く声をあげる。
「もっと」
そうだよ、もっと。すべてが見たい、すべて知りたい。
小さな頭を抱き込みながら、彼は思う。この中はどうなってるの? なにを思ってるの。自分を見てる? ちゃんと見てる?
本当は、全部を知らなきゃ気がすまない。意味がない。全部が欲しい、もっともっともっと。なにが出てきても今更驚かない、嫌ったりしない、逃げたりしない。
晒して、暴いて。生きてきて感じたすべてを教えてほしい。息絶える、そのときには。
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