第1章

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次の日の朝 生徒たちに混じって学校へ向かっていると、 「浅井ちゃん、おはよー。」 後ろから声がして振り返ると、ペッタンこの鞄を小脇に抱え、両手をポケットに入れた加藤くんがいた。 カッターシャツのボタンは上三つが外されていて、シャツの裾はダボッとしたズボンの上に垂らされて、靴の踵は踏み潰されてスリッパみたい。 所謂不良と呼ばれる格好だ。なのに背が高くて見た目がいい彼だとそれが一種のファッションみたいに見えてそれなりに魅力を感じる。 「おはよ、加藤くん。 胸のボタンをもう一つ止めなさい。それからシャツはズボンに入れて。 せっかくの色男なのに、崩さない方がカッコいいよ。」 「これが俺らしい着方なの。 ところでさ、昨日浅井ちゃんが言ってたこと… 確かに虚しくなるときがあるんだよなー。 終わった後、一緒にいるのが苦痛なんだ。」 やはりそうなんだ。私と高村くんはエッチの後もずっとくっついていた。それは相手が好きだから… 加藤くんは愛の無いセックスの虚しさを感じていたんだ。 欲望を満たすだけの行為は終わった後に嫌悪さえ感じさせるのだろう。 だから一緒にいたくなくなる。 若いときからそんなことばかりしていたら、異性に真剣に向き合えなくなるのではと心配になる。
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