続・完璧男子に類なし

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外は暗くなり始めていた。 歩くのも辛そうな瀬戸の手を引き、早歩きで進む。 「・・・まだ、どこかへ行くのか?」 「当たり前だ。せっかく来たんだから。むしろそっちがメインだ」 「っ!さっきのが目的じゃないのか?」 「ちげーよ。あんなん余興だ」 「余興?あんなことしておいて・・・」 「うるせぇ、楽しんでただろ」 「・・・っ」 まだ俺にかみつく力が残っていたようだ。 まぁ、次でそんなこと、できないようにするけどな。 突然、歩みを止める。 「・・・・・・着いた」 「な・・・・・・っ!」 瀬戸は言葉を失っていた。 目の前で舞う、無数の光たちに。 「・・・・・・綺麗」 素直に吐き出した瀬戸の言葉に、ドクンと鼓動が高まった。 それと同時に、自分の考えは間違っていないと、確信した。 『もうひとつの条件だ』 『・・・・・・なんですか』 『あいつの好きなものも、教えろ』 『・・・え?なんで・・・』 『いいから。ほしくないのか?これ』 『わ、わかりました!・・・・・・パレードとか夜景が好き、だったと思います』 『パレート?夜景?』 『ああいう暗い中で綺麗に光っているものが好きなんじゃないですかね』 『・・・・・・そうか』 瀬戸はただ黙ってパレードを見ている。 俺はその背後に回って、両肩に手を乗せた。 「っ!」 「バカか。なんもしねぇよ。黙って見てろ」 光の中で踊るキャラクターたち。 瀬戸も、周りの客も釘付けになっていた。 ただ俺は、意識を囚われるわけにはいかなかった。 やるべきことが、あるから。 そっと瀬戸の耳元に唇を寄せる。 「お前は、すごいよ」 「・・・え?」 「前、見てろって」 振り向いた瀬戸の頭を慌てて戻す。 今の自分の顔を見られたくないから。 「すごく努力してる。みんながお前を好きになるの、わかるわ」 「・・・・・・橘」 「・・・俺はきっと、お前には適わない」 悔しいけど、認めざるをえなかった。 「勉強も運動も外見も人望も・・・身体でも勝てなかった。  そのうえ、あんなにいい弟がいるんじゃ・・・完敗だ」 手をはずす。 「写真のデータは弟に渡してある。もう、お前を縛るものは何も持っていない」 「・・・・・・」 「酷いことして・・・・・・ごめんな、瀬戸」
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