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「どういうつもりだったのか、教えてもらえませんか」
公園のベンチに座ると、汀が訊ねてきた。
やはり昨日よりは冷静らしい。
「どういうつもり、とは?」
「昨日、なぜうちへ来たのか、ということです」
「なぜって・・・瀬戸を学校へ来させようとしただけだ」
「あの写真を見せて?」
「・・・まぁ、手段の一つではあった」
「そうですか」
汀は考え込んでしまった。
この態度は何なんだろうか。
そしてこの沈黙は何なんだろうか。
破りたくて、口を開いた。
「・・・・・・殴らないんだな」
「・・・え?」
「昨日俺のこと、あんなに殴りたそうにしていたから、殴られると思ってた」
「それは・・・兄から殴らないよう、言われていますので」
またか。
何を考えているんだ、あいつは。
意味がわからなくて、胸が痛む。
悩んでいると、汀が立ち上がった。
「橘さん・・・・・・お願いします。あの写真のデータをください」
汀は、俺に向かって頭を下げる。
兄を凌辱した相手に向かって。
ひどく、悔しいだろうに。
「兄は、一生懸命なんです。
学校へ行きつつ、家計のために日払いのバイトもして、自分と僕の生活を賄ってくれて」
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