続・完璧男子に類なし

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ふと、昨日の兄弟の会話を思い出した。 『兄さん、どこへ行く気?』 『・・・バ、バイトへ。これ以上休んでクビになったら、困るから』 『まだ熱だってあるんでしょ?休みなよ』 『だけど来月はいろいろとお金がかかっ――』 確かに、瀬戸はバイトへ行くと言っていた。 クビになったら困ると。 お金が必要だと。 じゃああいつは、 バイトをしている上で、あの成績を保っているのか。 ただ学校へ行っているだけの俺には、その辛さが想像できなかった。 「毎日すべきことがいっぱいで、肉体的にかなり疲れているはずなんです。  だから、精神的負担になることは・・・取り除いてあげたいんです!  ですから・・・お願いです」 「・・・・・・」 俺は、鞄の中を漁って、1つのUSBを取り出した。 それを見て、汀が表情を崩す。 目元はすでに、潤んでいた。 「あ、ありがとうございます!」 「ちょっと待て」 受け取ろうとした汀の手を、振り払う。 そして、言う。 「2つの条件がある」 「・・・え」 「あいつの弱点を、教えろ」 「っ!」 汀の手が止まる。 「どうした?ほしくないのか?」 「ほしい・・・けど」 「簡単だろ。まずは瀬戸涼太の苦手なものを、言えばいいんだ」 「・・・・・・・・・わかった」 汀は素直に俺の指示に従って、瀬戸の苦手なものを言ってくれた。 聴いた瞬間、思わず笑顔がこぼれる。 醜い笑顔が。 「そうか。あと1つ・・・と言いたいところだけど、気が変わった」 「えっ!?」 「もうひとつ追加。ってなわけで、条件はあと2つだ」 「そ、そんな!」 「欲しくないのか、これ」 汀の目の前で、USBをちらつかせる。 すると、従順な汀は悔しそうにその条件をのんでくれた。
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