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もう陽も落ちかけようとしていたころ、
俺たちはようやく目的の場所へと着いた。
人ごみの中を進もうとして、立ち止まる。
「おい瀬戸!何してんだよ」
「・・・・・・」
数歩後ろで立ち尽くしたまま動かない、瀬戸。
その表情は、暗かった。
「なんて顔してんだよ、せっかくの遊園地だろ?もっと楽しそうにしろよ」
「・・・・・・」
「・・・ちっ、ああもう!」
埒が明かないので、瀬戸の手を取って園内へと歩いた。
「・・・今度は、何をするつもりなんだ」
「さあな」
これが、俺が汀に出した条件のうち、最後に追加したものだった。
―次の休みの日、瀬戸を遊園地へ連れて来い―
男二人が手をつないで歩いているというのは、とても珍しいようだ。
すれ違うカップルや家族連れにジロジロ見られながらも、お目当ての場所へと進んでいく。
「よし、着いた」
「・・・・・・!」
俺の企みに気づいて、瀬戸は身体をこわばらせる。
しかし、瀬戸の心情なんて、俺の知ったことじゃない。
「乗ろうぜ、観覧車」
みんなに愛される乗り物が、
恐ろしいマシンへと変わる瞬間が、やってきた。
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