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実際に話しているのは翔太とさくらで、もう二人の男女ペアである菜月と貴志は聞き役になっていてほとんど話さない。 いつもは長い黒髪を無造作に輪ゴムで束ねている菜月は、今日は真っ直ぐ綺麗におろしていて、すこぶる清楚な女の子になっている。不自然なぐらいにおめかしした菜月は今日のデートに並みならぬ気合いを入れていることがよく分かる。 貴志は菜月と対称的だ。野球部で毎日野球帽をかぶっているのに、今日も野球帽をかぶっている。もう少し気合いを入れて欲しいところだが、毎日厳しい練習を積み上げてつくられた精悍な肉体に野球帽はよく似合う。普通にかっこいい男だ。 しかしながら、この男は翔太がちょいちょい話を振っても、「ああ」「うん」「そうだな」しか言わない。これだけイケメンであっても、恋愛事に関してはポンコツのようだ。 幼なじみの翔太とさくらペアとは違って、この都心の遊園地で作為的に引き合わされた菜月と貴志は、ほとんど初対面だ。だから、少しギクシャクするのは分かるのだが、こうも噛み合わないとは、頭が痛い。 この昼食後、二対二に別れる予定だが、この雰囲気だと、果たしてこの二人のカップルの間が持つのだろうか。ちょっとしんどそうだ。 「そういえば貴志さあ、この前買ったミスサタのCDどうだった?」     
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