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行列は少しずつ進み、二人は建物のなかに入った。 「ふーっ、涼しいわね」 「だから、ちょっとは怖がれっての」 「暗くて、おどろおどろしい音楽が流れてるぐらいじゃねー」 「そうかい、そうかい。 でも、そういやおまえ、このシティハイランドパークには大好きになった人と行きたい、って言ってなかったか?」 「えっ?!」 「だから、おまえの大好きな人と一緒に行きたい……」 「なっ!なに言ってるの?そんなこと言ってないわよ!」 「言ってたよ。確か去年の今ぐらいに」 「なんでそんな昔のそんなこと覚えてるのよ!それに言ってないわよ!」 「そんなに大声出すなよ。まわりに迷惑だろ」 さくらは顔を真っ赤にしていたが、暗がりのなかであったので翔太は気づかない。さくらにとってはラッキーだったかもしれないが、ふたりにとってはアンラッキーだったとみるべきだろう。 それにしても、もどかしい。 “私の”直近での関心が高いプロジェクトが、こうも前に進まないとは。 「私の記念すべき千組目のカップル誕生になるかってときなのに」 私は手元にあるチョコレートを口のなかに入れた。 キューピット社会はどんどんノルマが厳しくなってきた。特に少子高齢化の進行が早い、私の担当地区はなおさら厳しい。     
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