0人が本棚に入れています
本棚に追加
行列は少しずつ進み、二人は建物のなかに入った。
「ふーっ、涼しいわね」
「だから、ちょっとは怖がれっての」
「暗くて、おどろおどろしい音楽が流れてるぐらいじゃねー」
「そうかい、そうかい。
でも、そういやおまえ、このシティハイランドパークには大好きになった人と行きたい、って言ってなかったか?」
「えっ?!」
「だから、おまえの大好きな人と一緒に行きたい……」
「なっ!なに言ってるの?そんなこと言ってないわよ!」
「言ってたよ。確か去年の今ぐらいに」
「なんでそんな昔のそんなこと覚えてるのよ!それに言ってないわよ!」
「そんなに大声出すなよ。まわりに迷惑だろ」
さくらは顔を真っ赤にしていたが、暗がりのなかであったので翔太は気づかない。さくらにとってはラッキーだったかもしれないが、ふたりにとってはアンラッキーだったとみるべきだろう。
それにしても、もどかしい。
“私の”直近での関心が高いプロジェクトが、こうも前に進まないとは。
「私の記念すべき千組目のカップル誕生になるかってときなのに」
私は手元にあるチョコレートを口のなかに入れた。
キューピット社会はどんどんノルマが厳しくなってきた。特に少子高齢化の進行が早い、私の担当地区はなおさら厳しい。
最初のコメントを投稿しよう!