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だから、背中の矢を使って恋する男女の後押しをし続けて優秀な営業成績を上げてきた。しかし、もはやベテランキューピットになった今となっては、このような数を稼ぐやり方が必ずしも正しいとは思わなくなってきた。
最高の恋のはじまりをつくりあげたい。キューピットの誇りにかけて。
人の幸せを自分たちの幸せであるかのように喜ぶ。
とても美しい心を持った二人だ。
君たちは、君たちこそが幸せになるべきだ。
私は、君たちが末永く幸せになる素敵なパートナーになり得ることを知っている。
ただ、君たちは幼い頃からずっと仲良く過ごしてきた。距離が近づきすぎていて、二人の関係性を次に進めていくには逆に難しい状況かもしれないな。
でも、さくらは自分の気持ちに気付きつつあるし、二人が結ばれるのも時間の問題だろう。
キューピットは背中のカゴから、“特製”の矢を取り出し、弓を構え、弦を引いた。
「まあ、君たちにはおそらくこれは不要なものだろうが、お節介なキューピットの餞別だと思って、どうか受け取ってほしい」
キューピットは二人に向かって、矢を放った。
「私の記念すべき千組目のカップルになるためにも、さっきの野球帽コンビよりも先に結ばれてもらわないとね」
翔太とさくらの前に並んでいたカップルが、古びた扉を開いて建物のなかに入っていった。
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