前祝いのあとは

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こうして考えると存外悪い人ではないと思う。なんだかんだ言って頼りになるし、ちゃんと部下のことを把握してる。それに、昼間のあの笑顔……。子供のような目を細めてニカッと笑った顔が頭から離れない。やはり思い出すとまたきゅっと締め付けられる。 「……」 そんなはずないと、誤魔化すようにワインを煽った。 お腹も満たされ、奢ってもらい、更に車で送ってもらうことになった。 「送ってもらってすみません」 「別に」 来るときは背凭れなんて凭れてる場合じゃなかったのに、今は嘘のようにリラックスしている。ふわりふわりと心地よい感覚と酔いも手伝って、何時しか眠ってしまった。 「おい…………おい、起きろ」 「んん~……」 気づくと車は停車しており、車庫の中。 「……ここ、私の、家じゃない……」 眠た眼を擦りながらシートベルトを外す。 「お前が寝るのが悪いんだよ」 そう言って彼は先に降りようとする。このまま出て言ってしまおうとするその背中を見て覚醒した桜は焦りはじめる。 「あ、え、ええー?」 「もう疲れた。もーいいだろ、今日はここで」 「ここでって!?」 「俺ん家」 「いいわけないでしょう!」 桐島は素知らぬ顔で車を降りてしまった。桜も蹴破らん勢いでドアを開けて後を追う。 「ちょっと帰してくださいよ!」 「ヤダ」 押し問答を続けるうちに二人は広いエントランスを抜けてエレベーターに乗り、最上階に来ていた。 結局後にも戻れず部屋に引きずられていくことになったのだが───     
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