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甘美な示達《したつ》
――――――――………
その数日後、めでたく契約が結ばれた。
「よくがんばった。お前に任せてやっぱ正解だったな」
そう言って大きな笑みを浮かべる彼は、最初から桜を見込んでいたと言う。
「なんか初めて仕事で褒められた気がする~」
よくわからない感動に浸っているとそっと耳元に息がかかる。
「そんなに俺の褒美が欲しかったのか?」
ばっと押し戻すと、彼がニタリと笑っているのを見て顔を真っ赤にして反論する。
「そ、そんなんじゃッ」
ふいっと顔を背けようとした時、ぐいっと腕を引かれて物陰に引き寄せられる。するとあっと言う間に壁に押さえ付けられ迫られる。
すぐ近くではオフィスの喧騒が聞こえるのに、こんな所を誰かに見られたら、と焦るが、あごを持ち上げるようにかけられたしなやかな指にそんな思考も消滅してしまう。
見上げるとゾッとするほどの色気を纏った濃い藍色の瞳に出会う。
「今夜、俺の部屋でやるよ。待ってろ」
ふっと意味深に笑ってそのまま立ち去る彼の背中を見つめながら、体が疼くのを感じてしまうのだった。
(私って不純なのかな…)
その夜、部屋までついて行った桜に極上の褒美があったことは想像に難くない。
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