新任部長現る

2/4
159人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
事の始まりは一ヶ月前。 ドイツ本社からとても優秀な人が日本支社に異動となり、この度我が部署の部長に就任することが決まった。そして私の運命を大きく変える日、異国の風を纏ってその男は颯爽と現れた。 「皆、聞いてくれ」 人事のお偉いさんが皆の注目を集める。彼の後ろには、スラリと背の高い、高級そうなスーツを着こなした黒髪のイケメンが立っていた。その時点で女子の目線は釘付け。人事の紹介もそっちのけでこそこそと色めき立っていた。 そして人事の前に出てきた長身の色男は凛とした声音で挨拶した。 「はじめまして。今日からこの部署で部長をやらせてもらうことになった桐島悠次だ。この支社はドイツ本社の次に業績がいい社であり、もっと強化を計り、人材育成にも力を入れたいとの意向で私が責任を任された。期待のある社なので厳しく見ることもあると思うが、皆よろしく頼む」 淀みのないその声音と姿勢に誰もが憧れ、称賛した。盛大な拍手と共に朝礼が終わった。 私の彼への印象も他人とそう変わりはしなかった。 そう。その瞬間までは―――…     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!