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僕は今日もバイトを探した。
とはいえ、三十歳を過ぎてのバイト先は予想以上に見つからない。
ほとんどが学生を求めていたからだ。
しかも誰もが知る一流大学出と言うのがネックになっているのは間違いなさそうだ。
「どうしてこんないい大学出てて、こんなバイトを」
「いくらでもいい就職先があると思うよ」と多くの面接官が言葉を濁す。
まあ三十過ぎのおじさんを断る理由なのかもしれないが、どこに行っても同じことを言われる。
逆に何かあるのかと疑いたいぐらいだ。
三十過ぎのバイト探しがこれほど大変だとは。
ほんの最近まで一流企業で働いていたせいもある。
「給料は安くなるよ、大丈夫?」
金銭面の話か。
金に興味は薄い。
およその物欲が皆無に等しい。
仕事しかない生活が嫌だから、バイトを探しているのだ。
仕事、仕事。毎日サービス残業。
僕のための時間は一切なかった。
僕は心を病みかけていた。
僕はレースを外れ、自分探しをしてみようと考えた。
そうして引き籠ること二年半。
貯金も尽きようとしていた。
僕は答えのない日々に、答えを求めて上京したのだ。
バイトは決まらない。
やっと見つかった仕事が日雇いの短期バイト。
包装業務。
ただひたすら手を動かす日々。
しかもやたらと遠い。
電車に揺られること往復2時間。
これで本当に人手不足なんだろうか?
そう思いながら、引っ越し費用を貯めるために、一日五時間のバイト、二時間の通勤を始めた。
帰るとラジオしかない。
テレビは引っ越してからでいい。
パソコンは持っているが、ネット環境の無いアパートではただの箱と化している。
僕はやることがなさ過ぎて、ラジオを聴きながら、寝る日々を送っていた。
今日も体中を蛆虫が這いまわる夢を見た。
目を覚ますと、足元をムカデが歩いてる。
僕は思わず足を振って払いのけた。
本当にこの部屋、何もないのか。
誰か自殺したりしてないのか。
そう思わずにいられない。
短期のバイトはすぐに終わった。
結局何を包んでいたかもわからなかった。
封筒に商品と手紙みたいなものを入れ続ける仕事。
五日で四万円を手に入れた。
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