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暇はいっぱいあった。 僕はクーラーのある図書館を避暑地代わりにして過ごしていた。 とはいえ、毎日長居するのも気が引ける。 小さな図書館があちこちにあるので、そこを回るのがルーティン化していた。 新聞の求人欄、求人雑誌も見飽きた。 仕事がないわけじゃない。 選んでるから見つからないのも確かだ。 しかし僕は二度とノイローゼになる気はない。 同じような業種は嫌だ。 かと言って、肉体労働も自信がない。   考えてみると理不尽なことばかりだ。   思い出すと怒りしかこみあげてこない。   なのに職場から離れることができなかった。   多くがレールから外れることを恐れている。   だからまかり通っている世界なのだ。 今日は脳みそが割れ、脳がはみ出す夢を見た。 脳みそに蛆が湧き、それを見てる僕がいる。 夢は自分を俯瞰から見ているな、いつも。 いくら霊を信じてないとは言え、さすがにこう毎日ではやってられない。 僕はその原因を探ろうと考えた。 僕は町のことについて調べてみることにした。 この村の伝承。お化けの話のようなものを探す。 すると僕のアパートの辺りで昔心中事件があったことが新聞に載っていた。 昭和二三年八月。 太宰治が心中したのはいつだろう。 確か同じ年の六月十三日。 「人間失格」を描き終えてすぐのことのはず。 相手は愛人の山崎富栄。 とすればいわゆる太宰に感化されての心中事件といったところか? ウェルテル効果ってやつか。 ゲーテの「若きウェルテルの悩み」だったっけ? 太宰が殺したのは愛人だけじゃない。読者も道連れにしたんだな。
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