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金田一拓海は不知火学園の生徒だ。17歳だってゆーのに恋人もいない。ユーウツだぁ。
「な~に、ボ~ッとしてるのよ?夏が終わっちゃうよ?恋人探さなくていーの?」
臨時教師の牙城綾香は微笑みながら言った。
綾香は文芸部の顧問で、拓海のいる2年4組の担任だ。本当の担任である佐東結菜が行方不明になっていて、綾香が赴任してきた。
夏休みだし?拓海も綾香も恋人と海でバカンスしたい気分だが、休み期間中でも部活はある!
10月に開かれる文化祭に向けてガンバんなくちゃ!《不知火学園小説大賞》ってケータイ小説でバトルをしていた。
参加者は20人、参加者は不知火学園の生徒および教師に限られている。
拓海は5位、綾香は6位だ。
「そ~やって俺のランクを落とそうってハラでしょ?恋人なんか作ってられませんよ?」
「恋愛描くのにマジな恋愛しなくていーの?」
拓海は恋愛とミステリーがミックスした『不知火ラブストーリー』って小説を描いていた。
唐木ってゆーブラスバンド部(ドラム担当)の男子生徒が主人公で、沙織ってボーカリストに恋に落ちるのだが沙織の友達が次々に殺されていく。
『相田夏海、狭山香織、速水玲子…………女子ばっかりが殺されている、犯人は男子かも知れない』
唐木はそう推理した。
ガランとした学生食堂で拓海はブリックコーヒー味を飲んでいた。ウチはスゴい貧乏だ。父親は50過ぎだってゆーのにパン工場で派遣の仕事をしている。ボーナスも退職金もないのだ。中退になるリスクだってある。この大不況、高校中退は赤紙をもらうのと同じだ。戦死しそうだ。
拓海はミュージシャンを目指していた。
『工場だけは行かない方がいいわよ?』
牙城先生の言葉を思い出した。
臨時教師するまえはジェノサイドって派遣会社で働いていたらしい。FUJITSUでスマホを造っていたらしい。
『虫けらのように扱われて切り捨てられるのがオチよ』
窓の外は鉛色の空…………夕立が来そうだ。
ヒューッ!向かい方の旧校舎の屋上から何かが落ちてきた。ドスンッ!
「え!?人間!?」
拓海は食堂を飛び出し走った。
美しい少女の死体があった。ブレザーには炎の形をした校章。間違いなくウチの生徒だ。
ジジッ……ノイズのあとスピーカーから『マイクテスト…………推理小説を書いたらいけましぇーん!彼女みたくなるからねぇ?』
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